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Managing Across Borders: The Transnational Solution

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著者:Christopher A. Bartlett, Sumantra Ghoshal  出版:Harvard Business School Press
(ASIN/ISBN:1578517079, EAN/JAN:9781578517077) 価格:¥ 2,745
リリース:2002-02-04  ペーパーバック
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1988年に初版が発売された、企業のグローバル化に関するトランスナショナル理論を提唱する本書だが、時代が本書に追いついて来たともいえるほど、今日のグローバル企業の競争行動を論理的に整理するうえで、まったく古さを感じさせない良書。

関税障壁が引き金となった、現地生産化は、初めて企業にグローバル経営という新しい課題をもたらしたが、今日のFTA締結の動きは、単なる現地進出にとどまらず、国境をまたいだ業務機能の最適配置という、まさにグローバル視野での企業運営を可能にしつつある。なだたるグローバル企業は、世界地図を見渡して、最適な材料調達地を求め、最適な生産地に工場を敷設し、最適な物流網を構築して、世界各国の消費地への販売を手がけようと嗜好する。こうしたグローバルな企業運営体制の構築は、これまでの商品や技術を中心としたグローバル企業間の競争に加えて、世界を舞台とした経営品質そのものをも企業の競争力の源泉とするようになってきている。こうしたグローバル経営の競争力向上が求められている中、もとより現場力を強みとし、経営不在とまで言われた日本企業には大きな課題が山積している。

まず第一に、伝統や文化は先達の背中を見るうちに暗黙のうちに身につくものという不文律を廃し、まったく歴史的な背景を知らない世界各国の従業員が、正しく会社の進もうとする方向に従った判断を実践できるように、企業のミッションやビジョン・戦略を明確化・簡素化・本質化する必要がある。次いで、世界各国に有機的に分散配置される機能間の連携が日々の自己改善を伴って連携するように、業務手順の標準化と共有化・機能別指標の明示がなされる必要がある。

最後に、これが最も困難と想定される課題だが、世界各国の従業員を戦力とすべく、採用や教育・登用をグローバルに行う必要がある。これまでは、本国の人材のみを経営資源として捉えがちであった日本企業だが、進出国の人材をも競争源泉として捉えうるかどうかが、グローバル列強企業との優劣を決する上での大きな要因となるだろう。

グローバルに分散配置された機能拠点は、自ずとグローバル統合本部としての本社機能を担うようになり、本国本社の役割を希薄にしてゆく。現地採用された機能拠点の代表はグローバルにおける発言力を高めていき、本社を介さないグローバルでの機能間連携を推進して行くこととなるだろう。

日本企業のグローバル経営品質向上は、脱日本と脱日本人という、これまで経験したことのないチャレンジをはらんでいるように思われる。

                            GML副社長 八谷 賢次

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