Home > Columns > 優れたグローバル企業

優れたグローバル企業

fukuzumi_s
福住俊男
グローバルマネジメント研究所 
代表取締役社長

優れたグローバル企業とはどのような経営を行う企業であろうか?

経営戦略に「グローバル化の推進」というテーマを掲げている日本企業がここ2、3年よくみられる。その意味するところは、一般的には海外拠点を増やし、海外売上比率を高め、海外での営業利益をさらに確保しようとするものだと思われる。日本が少子化に向かい、就労人口の減少が予測され、市場の成長が期待できない今、「グローバル化の推進」を経営戦略の柱にすることは、それ自体は正しいと思う。

しかし、海外拠点長として社長を任命し、社長に拠点経営を任せ、本社と社長の間でコミュニケーションをとりながら拠点を管理する方法は、早期に拠点の単月黒字化を目指し、初期投資を早く回収しようとするために、拠点別収支を重視し、結果的に拠点別部分最適な経営を行うことになる。

日本企業は一般的に、拠点の社長に経営を任せ、遠心力を効かせながら拠点別部分最適な経営を行い、その結果を連結して、ある程度の利益が出れば良しとする経営をしてきたと言える。

一方、情報技術の進歩により、現在では拠点をまたいだバーチャルなグローバルチームを作り、国や地域を超えて共同で仕事をする仕組みを作ることは、それほど難しくない。

先進的なグローバル企業では、電子メール、電話会議、テレビ会議と、さらに時々リアルなミーティングを取り混ぜて、世界の様々な拠点で同じ業務をしている責任者や担当者が、チームを作って共同作業をすることは当たり前になっている。製品開発、購買、生産管理、品質管理、物流、販売、マーケティング、人事や経理、法務といった様々な業務、また一つのグローバル顧客の関係者からなるグローバル・アカウント・チームなどにおいて、直接同じ業務をしている他拠点の業務担当者と頻繁(最低月に1回)に情報共有をし、グローバルベストのナレッジやテクノロジーを磨くとともに、こうした経験や知識を活用しながら、自らの拠点の経営課題に取り組んでいる。

こうした企業では、世界の全拠点の各業務責任者が、同じような業務のKPI(Key Performance Indicator)を業績評価指標として使い、各拠点別に定められたKPI別の目標値と実績値の予実対比表を見ながら、電話会議などで、各拠点の業務課題や成功・失敗体験などを共有し、様々な意見や情報交換をしながら、自分たちの仕事をどのようにしたらグローバル全体最適にできるかを話し合い、日々の仕事を進めている。優れたグローバル企業にはこうしたグローバルチームが多数みられるのが特徴である。

当然、個人の評価も各拠点の社長だけが行うのではなく、グローバルチームの同僚たちが360度評価を行い、他拠点の人を評価し、またはされる仕組みになっている。そのために人材育成の考え方や、個人の業績評価基準などもグローバルに共通化されていることが多い。

次回には、こうしたグローバル全体最適を追及している企業と、拠点別部分最適を追及している企業とでは、競争力においてどのような違いが出てくるかを考察する。

Home > Columns > 優れたグローバル企業

ホーム会社概要サービスのご案内採用情報お問い合わせ個人情報の取扱いについて