
経営・人財コンサルタント
神戸学院大学客員教授
P&Gの研究開発本部で、日本、アジア、世界市場向けのヘアケア製品の開発、ベルギーに赴任し、ヨーロッパ、アジア、ラテンアメリカ向けの柔軟仕上げ剤の処方開発を牽引。 その後、人事統括本部に異動し、約500人、18の出身国からなる神戸テクニカルセンターの業務改革、人材育成を推進。 その他、社内の日本人で初めて父親による育児休業を取得し、その経験を朝日新聞で「育休父さんの成長日誌」として連載、出版(共著)。 2008年、独立。 多様性を駆使した、世界に通用する製品・人財・組織開発のコンサルティングおよび講師・講演活動を、産学官民、日本語・英語、大・中小企業と幅広く行う。 大阪府立大学大学院工学研究科博士前期課程化学工学専攻修了(工学修士)
「Vol.2はVol.1の続きとなります。Vol.1を先にお読みください。」
◇ リーダーシップとは?
リーダーシップとは?
という質問に対して、みなさんはどう答えますか。 ちょうど先週行った研修で、同じ質問を参加者にしてみたところ、「ある目標に向かって」、「人(または組織)をまとめ」、「ひっぱる」といったことが共通認識として挙げられました。次に、「では、リーダーシップを発揮することが期待される人は?」と聞くと、「上司」、「トップ」、「チームリーダー」と続いた後、「私たち一人ひとり」、「みんなをサポートできる人」、といった意見が出ました。 前の3つは、従来のトップダウンまたは上意下達に通じるリーダーシップです。 後者2つは、これからの変化の時代、多様性の時代により柔軟に対応する新しい形を表していると思います。
日本においてリーダーシップの象徴は、いわゆる「長」です。村の「長」にはじまり、現在でも社長、部長、課長といった肩書はリーダーの証しであり、リーダーシップを発揮することへの期待の表れでもありました。それに加え、これからのリーダーシップとして、2つのモデルをご紹介します。
◇個人によるリーダーシップ
一つ目は、「長から個人」へ、というものです。これは、「長」に期待されがちだったリーダーシップを、私たち一人一人がもっと発揮できるのでは、という考え方です。私が学んだのは、一人ひとりが期待された仕事(インプット)に対して期待された成果(アウトプット)を自ら超えることがリーダーシップの始まりである、というものでした。 そして、これを細分化すると、以下のようになります。
● 「あんなこといいな♪、できたらいいな♪」と思うことをヴィジョンとして描く(Envision)
● そのヴィジョンに人を引き込み、チームを創る(Engage)
● チームを鼓舞し、メンバーの力を引き出す(Energize)
● 困難に立ち向かい、不可能を可能にする(Enable)
● しっかりと実行し、成果を上げる(Execute)
● 内外で称え、成果およびプロセスの役割モデルとなる(Empower)
このように、成果はもちろんそのプロセスも同じくらい重要です。日本では「いきすぎた成果主義は欧米を真似したせいだ」といった論調をしばしば見かけますが、私の前職で徹底していたのは、「Pay for Performance」というもので、決して「Pay for Result」だけではありませんでした。パフォーマンスには結果とプロセス(および能力)両方が含まれ、端的にいうと、いかに結果が良くても、プロセスが良くなければ、そのプロセスを改善してさらに良い結果を目指すことがより大事だということです。前回のコラムでも述べた、自立が高じて独りよがりになってしまった人の、過度な「結果自慢」を抑制するのにも効果的です。
◇支援型リーダーシップ
もう一つは、支援型リーダーシップと呼ばれるものです。 私が部下を持つようになったときに学んだモデルで、当時の上司に言われたのは、「あなたは、これまで、自らが先頭を切って成果を上げてきました。 これからは、人を通じて成果を上げることを学んでいきましょう」ということでした。 そこでは、部下を能力と自信の2軸でマッピングし、そのレベルによって支援するスタイルを変えていきます。能力も自信も高い人、いわゆる「できる」人に対しては、「任せる」。能力も自信も発展途上の「できそう」な人については、「アシスト」。 能力も自信も低い、「まだできない」人に対しては、「一緒に」手取り足とり教える。そして、この「地図」の上で、お互いの考えを見える化することにより、目線を合わせ、さらに目標設定をすることができます。

元海軍大将、山本五十六も「男の修行」で同様の考えを述べています。以下、引用します。
「やってみせ 言って聞かせて させて見せ ほめてやらねば 人は動かじ」
「話し合い 耳を傾け 承認し 任せてやらねば 人は育たず」
「やっている 姿を感謝で 見守って 信頼せねば 人は実らず」
七五調がしっくりくるのと、最後を「任せる」で終わらず、「実り」とされているところが素晴らしいと思います。
次回は、コミュニケーションです。
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cKiichiro Nakamura 無断複製・転載を禁ずる
リーダーシップとは?
という質問に対して、みなさんはどう答えますか。 ちょうど先週行った研修で、同じ質問を参加者にしてみたところ、「ある目標に向かって」、「人(または組織)をまとめ」、「ひっぱる」といったことが共通認識として挙げられました。次に、「では、リーダーシップを発揮することが期待される人は?」と聞くと、「上司」、「トップ」、「チームリーダー」と続いた後、「私たち一人ひとり」、「みんなをサポートできる人」、といった意見が出ました。 前の3つは、従来のトップダウンまたは上意下達に通じるリーダーシップです。 後者2つは、これからの変化の時代、多様性の時代により柔軟に対応する新しい形を表していると思います。
日本においてリーダーシップの象徴は、いわゆる「長」です。村の「長」にはじまり、現在でも社長、部長、課長といった肩書はリーダーの証しであり、リーダーシップを発揮することへの期待の表れでもありました。それに加え、これからのリーダーシップとして、2つのモデルをご紹介します。
◇個人によるリーダーシップ
一つ目は、「長から個人」へ、というものです。これは、「長」に期待されがちだったリーダーシップを、私たち一人一人がもっと発揮できるのでは、という考え方です。私が学んだのは、一人ひとりが期待された仕事(インプット)に対して期待された成果(アウトプット)を自ら超えることがリーダーシップの始まりである、というものでした。 そして、これを細分化すると、以下のようになります。
● 「あんなこといいな♪、できたらいいな♪」と思うことをヴィジョンとして描く(Envision)
● そのヴィジョンに人を引き込み、チームを創る(Engage)
● チームを鼓舞し、メンバーの力を引き出す(Energize)
● 困難に立ち向かい、不可能を可能にする(Enable)
● しっかりと実行し、成果を上げる(Execute)
● 内外で称え、成果およびプロセスの役割モデルとなる(Empower)
このように、成果はもちろんそのプロセスも同じくらい重要です。日本では「いきすぎた成果主義は欧米を真似したせいだ」といった論調をしばしば見かけますが、私の前職で徹底していたのは、「Pay for Performance」というもので、決して「Pay for Result」だけではありませんでした。パフォーマンスには結果とプロセス(および能力)両方が含まれ、端的にいうと、いかに結果が良くても、プロセスが良くなければ、そのプロセスを改善してさらに良い結果を目指すことがより大事だということです。前回のコラムでも述べた、自立が高じて独りよがりになってしまった人の、過度な「結果自慢」を抑制するのにも効果的です。
◇支援型リーダーシップ
もう一つは、支援型リーダーシップと呼ばれるものです。 私が部下を持つようになったときに学んだモデルで、当時の上司に言われたのは、「あなたは、これまで、自らが先頭を切って成果を上げてきました。 これからは、人を通じて成果を上げることを学んでいきましょう」ということでした。 そこでは、部下を能力と自信の2軸でマッピングし、そのレベルによって支援するスタイルを変えていきます。能力も自信も高い人、いわゆる「できる」人に対しては、「任せる」。能力も自信も発展途上の「できそう」な人については、「アシスト」。 能力も自信も低い、「まだできない」人に対しては、「一緒に」手取り足とり教える。そして、この「地図」の上で、お互いの考えを見える化することにより、目線を合わせ、さらに目標設定をすることができます。

元海軍大将、山本五十六も「男の修行」で同様の考えを述べています。以下、引用します。
「やってみせ 言って聞かせて させて見せ ほめてやらねば 人は動かじ」
「話し合い 耳を傾け 承認し 任せてやらねば 人は育たず」
「やっている 姿を感謝で 見守って 信頼せねば 人は実らず」
七五調がしっくりくるのと、最後を「任せる」で終わらず、「実り」とされているところが素晴らしいと思います。
次回は、コミュニケーションです。
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cKiichiro Nakamura 無断複製・転載を禁ずる