Home > Columns > なぜ(Why)を問わずに、どうやって(How)を問う

なぜ(Why)を問わずに、どうやって(How)を問う

Kenji Hachiya
八谷 賢次
グローバルマネジメント研究所ベトナム
代表

日本人が持つベトナム人への課題認識の代表的なものの一つに、「言い訳が先に立つ」があります。
例えば、以下のようなやり取りで、日々ストレスが増していきます。

日本人管理者:「なぜ資料の提出が遅れたの?」
ベトナム人スタッフ:「xx部署のデータ提出が遅れたからです。」
日本人管理者:「また人のせいにして!(期限を守るのは自分の責任だろう!)」

また、
日本人管理者:「頼んでおいた資料の翻訳できた?」
ベトナム人スタッフ:「資料がたくさんあって、まだできていません」
日本人管理者:「そんなこと、始めからわかっていただろう!(どうして前もって対策を打たないの!?)」

「なぜ」を問うことはより物事の本質を捉える上で重要ですし、「5つのなぜ」など根本原因を突き詰めるための必須ツールですので、弊社の教育の中でも、また日常のベトナム人スタッフとの会話の中でも努めて「なぜ」と問うようにしていますが、上記のように今ひとつピンと来るような回答が得られません。
講座の中での「なぜなぜ分析」でも「ワーカが注意して仕事をしないから」「ワーカがルールを守らないから」などの表面的な分析で終わってしまうことが良くあります。


なぜ(Why)を問わずに、どうやって(How)を問う

かく言う私も来越してしばらくは、上記のようなやり取りにカッカと来てストレスを溜めていましたが、ようやくベトナム人に「なぜ」が通用しないのか少しずつわかってきた気がします。

– 「なぜ」という問いにベトナム人は素直に答えている。

多くの場合、ベトナム人の「なぜ」に対する回答を、日本人は「言い訳をしている」「責任逃れをしている」と捉えがちですが、多くの場合は純粋に理由を答えています。
上記の例でも「資料の提出が遅れた」のは「xx部署のデータ提出が遅れた」ためというのは、データ提出をせかすのも本人の役割であると言うことは別にして、確かに遅れた理由に素直に答えています。


-残念なのは、「なぜ」を問う日本人の意図を汲めないこと

日本では「なぜ」という問いを、相手により深く考えてもらうために使ったりしますが(なぜ、製品を多く販売したいのですか?など)、残念ながらこの手の「なぜ」の用法はベトナムでは通用しません。「明日の天気はどうですか?」という問いに「どうして、明日の天気を知りたいのですか?」などと問いで返すと、「なんで私が質問しているのに、あなたの質問に答えなきゃならいの!」と逆上されてしまいます。
残念ながら、まだベトナムでは会話の中で相手の意図を汲むとういことが一般的ではなく、上記の例でも「そんなことは、始めからわかっていただろう!」というのが「どうして前から準備しなかったのか」という意図があることを理解できません。素直に「翻訳ができた?」と言う問いに「まだです」と答えているのです。


-なぜ(Why)を問わずにどうやって(How)を問う

多くの場合、日本人が問う場合の「なぜ」には、どうやったら同じミスを繰り返さないようにできるのか、どうやったら役割責任を果たせるのか、どうやったら前もって仕事の段取りができるのか、などの過ちに対するカイゼン提案の期待があります。
しかしながら、この期待が「なぜ」を通じて伝わらないために、互いにストレスを溜める会話となってしまうわけです。
そこで、意味深な「なぜ」という問いの代わりに「どうやって」を使ってみてはと思います。
例えば、上記の例では「どうやったら期日どおりに資料が作れる?」「どうやったら前もって仕事の段取りが組める?」と意図が直接伝わる問いに代えれば、これまた素直にベトナム人なりの対応策を提案してくれます。(もちろん、案が適切でなければ軌道修正の必要はありますが)

相手の意を汲むというのは、ベトナム人にとっては乗り越えるのが高いハードルの一つですが、一方ではっきりと自分の意思を伝えられない日本人にも鍛え上げの余地があります。

Home > Columns > なぜ(Why)を問わずに、どうやって(How)を問う

ホーム会社概要サービスのご案内採用情報お問い合わせ個人情報の取扱いについて