知人がやっている「外国人研修・技能実習制度」の研修生面接に同行し、中国の吉林省は長春を訪問してきました。
「外 国人研修・技能実習制度」は、研修期間の1年と合わせて最長3年の期間において、諸外国の青壮年労働者を日本に受け入れ、日本の産業・職業上の技術・技 能・知識の修得と、より実践的かつ実務的な習熟を支援するものです。日本側では(財)国際研修協力機構が推進しています。
この制度を利用すること によって、日本の中小企業は中国やベトナムといった国の安価な労働力を獲得することができるわけですが、むしろ日本の製造現場で働こうという若者が激減し た日本においては、こうした労働力の供給を諸外国に頼らざるを得なくなっているのが現状のようです。
一方で、研修生は日本語や日本の技術を研修を通じて学ぶことができます。しかしながら、中国やベトナムでは一般の工場労働者の月給が1万円前後というのが相場ですから、日本で得られる高額の報酬がなによりの魅力となっています。
今回訪問した長春市は、中国吉林省の省都で、総人口は678万人、かつての満州国の首都として新京と呼ばれていた街です。しかし、冬場は-35℃にもなる土地柄ですから、特に周辺の農村部で農業を営む人たちは1年の半分は働き口を失う環境にあります。
今 回の面接に選抜された青年たちも多くは、長春郊外からやってきた人たちで、タクシーの運転手や自動車修理工場、農業などの経験者です。まだ日本語研修を受 けて日も浅いこともあり、たどたどしい日本語ではあるものの、純朴さが伺える表情と、日本で働きたいという強い希望に目を輝かせていたのが印象的でした。
国際研修協力機構が出している統計によれば、2004年の実績では5万1千人が研修生として、茨城県や岐阜県など全国に来日しています。
ま た、法務省入国管理局「平成15年末現在における外国人登録者統計」によると、平成15年末現在における外国人登録者数は191万5千人となり、昭和44 年以降35年間にわたり過去最高記録を更新し続けています。外国人登録者の日本の総人口1億2千万人に占める割合は、平成14年末に比べ0.05ポイント 増加し、1.5%となっており、労働人口に占める割合も1%を越えたあたりまで来ています。
今はまだ、日本の法規制により、外国人は日本では働き たくとも働けないのが現状ですが、日本の少子化・労働人口減に伴って、外国人受入の規制緩和が盛んに叫ばれていますから、日本での外国人就労の緩和も遠い 将来の話ではないでしょう。そうなれば、堰を切ったように安価な外国人労働者が高額の報酬を求めて日本になだれ込むことは火を見るより明らかです。
ま た、日本の企業もますます熾烈になる国際競争の中で安価な労働力と資源を求めて盛んに海外進出を続けています。一昔前は精密さが求められるような作業は国 内でしかできないと思われてきましたが、現在ではコンピュータ基盤などの精密機器も海外で生産されることが当たり前のようになってきています。
こうした状況の中で、国内では安価な労働力の流入により労働人口の補填が行われつつ、もともと高価な日本人はどんどん海外での活躍を求められるようになってきているのが、今起きている未来なのではないでしょうか。
しかしながら、現地企業への就職を求める人はもとより、日系企業の御旗のもとで活躍するとしても、既にそこは外国です。採用から昇格まで、これからの競争相手は日本人だけではなく、現地国人やさらには他の外国人も含まれてきます。
海外で働くことによる言語や文化のハンディキャップを負いつつ、その上優秀な外国人と肩を並べて競い合うことが当たり前となる日もそう遠くはないように思えます。
皆さん、心構えはできていますか?
八谷 賢次(代表取締役副社長)